隣の芝は青く見える、だったかな。
でもそれって青くなくても良いんだろうなきっと。
違う色なら何でも羨ましく思ってしまうのが人間の性。
でもそれを糧に頑張れる部分もあるのではないのだろうか。
この『ぼくのたび』は、ホテルを営んでいるくまのお話。
一見、暗い絵本なのかなと思うほど黒を基調としていてどんよりしている。
しかしその中にも優しさや温かみを感じる。
晴れ晴れしない空から察するに場所はおそらくロンドンであろう。(そう思うのはこち亀に出でくる絵崎教授が“ロンドンの灰色の空が懐かしい”と言っていたからだ)
可愛らしいくまの旅への想いは、きっとどこのホテルマンにも響くのではないのだろうか。
仕事を全うする中で、お客さんとの出会いを大切にし会話をし
想いを巡らせ次は自分が、と。
想いを馳せる姿と、また一日ホテルマンとしての仕事を楽しむくまの姿は
誇らしくともどこか歯がゆい、そんな感じがする。
短編小説のような世界が広がった気がした。
是非コーヒー片手に読んでいただきたい。
幼児の子どもには少し物語として終着点が見えにくく、どうしても絵が暗めなので興味は薄れたが、低学年の子どもには“旅”とは何かを話しながらわくわくして聴いてくれていた。
読み応え ☆☆☆☆
世界観 ☆☆☆☆
しっぽり ☆☆☆☆☆
【ぼくのたび】
みやこし あきこ